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第7話|空白の中で、僕は働き始めた

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大学を卒業した朝、 僕の頭の中は、空白だった。

何かをやり切った感覚も、 胸を張れる実績も、 次に進むための確かな自信もなかった。

教員採用試験は不合格。

それも、予想通りの結果だった。

大学4年間、 真剣に自分と向き合わなかった。

そのツケが、 はっきりと形になって返ってきただけだった。

でも、 生きていくためには、 働かなければならない。

実家に戻り、 仕事情報誌をめくり、 ハローワークにも足を運んだ。

適性検査の結果をもと、 職員さんが持ってきた仕事は、 うなぎの養鰻場だった。

うなぎ釣りは好きだった。

でも、教師を目指していた僕には、 あまりにも異質に感じて、断った。

両親は、 実家で過ごすことを受け入れてくれた。

でも、「働こうね」という無言の圧力は、 はっきりと感じていた。

当時は、就職氷河期。

正規職員の道は、 今よりずっと狭かった。

なんとなく、 福祉に興味があった。

自分自身、 身体のことで悩んできたこともあり、 「自分ではどうにもならない事情を抱えた人を支える仕事」 に、 漠然とした関心があった。

強い志があったわけではない。

ただの直感だった。

求人誌で目に留まった、 ある障害者更生施設の支援員のアルバイト。

面接を受けると、 施設長は、 「明日から来てほしい」と言った。

自分の身体の悩みを話すと、 親身に聞いてくれた。

4月から、 アルバイトとして働き始めた。

大学4年間という時間を考えると、 アルバイトからのスタートは、 正直、情けなかった。

でも、 氷河期の現実の前では、 そんなことを言っていられなかった。

必死だった。

食事介助、入浴介助、生活支援。

正規職員の補助として、 とにかく目の前の仕事をこなした。

やってみると、 不思議と、はまっていった。

楽しかった。

半年も経つ頃、 「この年齢でアルバイトはきつい」 と感じるようになった。

仕事内容にも慣れ、 思い切って、 準正規職員への登用をお願いした。

提示された給与は、 正直、低かった。

父が紹介してくれるかもしれなかった企業よりも、 ずっと。

それでも、 僕はここに残ることを選んだ。

準正規職員になると、 立場は大きく変わった。

アルバイトをまとめ、 責任ある仕事を任されるようになった。

夜勤も経験した。

夜の施設は、 独特の緊張感があった。

1年後、 正規職員になった。

だけど、すぐに出向。

生活支援から、 作業指導・作業支援の部署へ。

納期、不良品、謝罪、工賃計算。

まったく初めての世界だった。

新鮮で、楽しかった。

でも、 人間関係と、支援の難しさに、 何度もつまずいた。

感情が乱れ、 怒り、落ち込み、 自分を保てなくなることもあった。

そして、 決定的な失敗をする。

軽率な言葉が、 セクハラとして受け取られた。

問いただされ、謝罪した。

同時期に、 別の女性からも苦情があった。

自分の未熟さが、 一気に露呈した瞬間だった。

正気を失っていたのだと思う。

配置換えを命じられた。

作業支援へ。

ちょうどその頃、 長年交際していた彼女と結婚した。

新婚生活が始まった。

不思議なことに、 作業支援の仕事は、 自分に合っていた。

活動的で、 前向きな気持ちで働けた。

4年が過ぎ、 副主任を任された。

少しだけ、 自信が戻ってきた。

そんなある日、 大学の同級生の結婚式に招待された。

ゼミの仲間が集まる席。

そこには、 現役合格で教師になった友人、 大学院を経て採用された友人がいた。

学級担任として、 子どもたちと笑顔で写る写真。

胸の奥で、 何かが、激しく動いた。

悔しさ。

羨望。

怒り。

「俺は、何をしているんだ」

その感情から、 逃げられなかった。

27歳。

僕は決めた。

教師になる。

28歳、2回目の教員採用試験。

特別支援学校を選んだ。

結果は、 一次合格、二次不合格。

模擬授業で、 絵本を“読み聞かせる”意味すら、 分かっていなかった。

当然の結果だった。

それでも、 ここで終わらなかった。

今振り返ると、 この時期の僕は、 不格好で、未熟で、 どうしようもなかった。

でも、 人生を投げなかった。

これだけは、 胸を張って言える。

迷っている君へ

もし今、 「自分は何も持っていない」 そう感じているなら、 それは君だけじゃない。

僕も、 何者でもないところから、 何度もやり直した。

遠回りは、 確かに苦しい。

でも、 遠回りをした人間にしか、 見えない景色がある。

この先、 僕はもう一度、挑む。

まだ続きがある。

それは、 また次の話で。

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