はじめに
なぜこの回に惹かれたのか──“人を育てる力”に圧倒され、共感し、考えたこと
私たちは日々、部下や後輩と向き合いながら「人を育てる」というテーマに向き合っています。
とはいえ、育てるとは何か──答えのない問いに、私自身も悩み続けてきました。
今回、『プロフェッショナル 仕事の流儀』で紹介された栗山さんの姿には、まさにその問いに向き合う“生き様”が
映し出されていました。
「自分に、ここまでのエネルギーを出せるだろうか──」
そんな思いを抱きながら、『プロフェッショナル 仕事の流儀』を観ていました。
栗山さんの姿には、人を育てるうえでの情熱、覚悟が共存していて、畏敬の念を抱かずにはいられませんでした。
一方で、そのマインドや言葉に共感し、自分の経験と重なる場面もいくつかありました。
今回のブログでは、私自身の所見とともに、読者の皆さんと“育てること”“支えること”について考えてみたいと思います。
栗山さんの挑戦
今回取り上げるのは、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』で2025年2月17日に放送された「心に灯を、ともに、未来を ~栗山英樹~」という回です。
番組では、プロ野球業界を走り続けてきた栗山さんに密着し、組織を率いる者として、人を育てるとはどういうことか──というテーマが丁寧に描かれていました。
※出典:NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』「心に灯を、ともに、未来を ~栗山英樹~」(放送日:2025年2月17日)
※番組内容の引用は著作権法に基づき最小限の範囲で行っております。
私がこの回に注目したのは、まさに“人を育てる”というテーマが、自分自身の課題と重なっていたからです。
チームマネジメントに日々向き合う中で、「人を信じるとは何か」「言葉で伝えるとはどういうことか」と悩むことが多く、栗山さんの姿勢に、自分自身の働き方を見直すきっかけをもらえるのではないかと感じました。
特に印象的だったのは、「部下を心底信じぬく」「誠心誠意、部下に寄り添う」という信念を言葉と行動で示
していたことです。
組織を率いていくには、愛と誠実さ、そして“信じぬく覚悟”が求められているのだと思います。
言葉と行動に宿る“育てる力”──私が学んだリーダーシップの本質
番組の中で何度も感じたのは、栗山さんの「育てる力」が、言葉や行動の一つひとつに宿っているということでした。
特別な手法やテクニックではありません。
部下を信じぬく姿勢、誠実に話を聴く姿勢、そして伝え続ける覚悟──そのすべてが、部下の心に火を灯す原動力になっているように感じました。
ここでは、私が特に心に残った場面を取り上げ、自分自身の経験と照らし合わせながら、チームづくりや人材育成について考えたことを綴ります。
心に火を灯す力
チームのメンバーが言った言葉が、印象に残っています。
「本当に理解したいということが伝わってくるので、そこにいくためには本音をどうしても話したくなっちゃう」
「偉い人であろうがいちばん下のスタッフだろうが、同じく一生懸命話を聞く」
適当に話を聞いていると、相手にすぐ伝わってしまいます。
相手のほうにおへそを向ける。
うなずく。
相手と同じ目線で立つ(座る)。
必要に応じて質問をする。
分かりにくかったところ、聞き取れなかったところはそのままにしないで、必ず確認する。
話の内容を一字一句聞き洩らさないようにする。
分かったふりは厳禁。
そして、意外と知られていないのは、相手の表情を読み取ること。
どんな気持ちで言っているのか・・
怒っているのか、悲しいのか、嬉しいのか、不安なのか、悩んでいるのか、焦っているのか。
相手の表情から読み取ることも踏まえて、何を伝えたいのか把握します。
この人は、信じることができる・・。
ウソはつけない・・。
この人に伝えたい・・。
こうして、偽りのない本音が出てくると、伝えたいことがはっきりしてきます。
中心となる課題が見えてきます。
そして、質の高い情報共有が可能になります。
栗山さんは、チームのために「相手を心底信じて傾聴する」ことを実践されているのだと思います。
ものすごいエネルギーが要ることは間違いありません。
私もできるだけ、そのような姿勢を心掛けたいと思っています。
中心となる課題が共有できてくると、次に見えてくるのは・・・
そうです!
「これからどうするか」という課題です。
また課題!?
ですが、一歩前進です!
「これからどうするか」
もっともっと深堀するために、関係者と意見交換することになるでしょう。
だんだんと、自分自身の考えが深まっていくのを感じるはずです。
栗山さんの、こういった真摯で真剣な姿勢が、チームの力を最大限に高める原動力となっているのです。
私もできる限り、そうでありたいです。
逆境を乗り越える力
2012年北海道日本ハムファイターズ監督就任
「タレント上がりに務まるのか?」
このような心ない言葉に対して言った、栗山さんの言葉が印象に残っています。
「だからこそ やりきってみたい」
「そういう人間でも 選手の良さを引き出せる可能性がある」
私は、個人的に「だからこそ」という言葉(心構え)が好きです。
苦しんで、悩んで、努力して、克服してきた経験
いまだ解決していないこと
恥ずかしかった、悔しかった、上手くいかなかった経験
そんな尊い経験があるからこそ、選手の育成やチーム運営の発展に貢献できる。
病気を経験したからこそ、人の心の痛みを理解することができる。
報道関係のキャスターという経験があったからこそ、選手の話を聴いたり、意図を分かりやすく伝えることができる。
2軍から1軍へ這い上がった経験があるからこそ、幅広い選手の育成を見守ることができる。
ご自身のあらゆる経験を糧に、勇気をもってチャレンジする栗山さんの生き様に、畏敬の念を抱きます。
私も病気を克服してきた経験があります。
その病気があったからこそ、人の役に立ちたいという使命感を持って、今まで努力することができました。
転職も一度経験しています。
前職の経験では、若かったということもあり、それはそれは失敗の連続でした。
悔しい思い、恥ずかしい思い、孤立したときのつらさ・・・さんざん味わいました。
その経験があったからこそ、他者の気持ちに寄り添うことができるようになってきました。
相手を信じぬく力
「僕が引き出す力を作るためには、たったひとつできるのは、本当に心の底からできるって信じてあげて いつも接
する 送り出してあげる っていうことしかなかったので それをやりきろうと思った」
「かつて自分がそうしてもらったように」
この言葉は、番組の中で最も感銘を受けたものです。
思えば私も上司に言われた言葉が、心の支えになっています。
「あなたが考えたこと思ったことを、自信を持って周囲に伝えてください」
「あなたならできる」
何も考えずに、適当にその場を繕う形で出た言葉はすぐに見破られます。
そうではなくて、「本当に心底できると信じて」出た言葉が、相手の心に届くのです。
私は、チームのメンバーの「強み」に着目しています。
その「強み」を最大限に生かせるように、役割を分担します。
ただ、役割を分担するだけでは不十分です。
役割を担った人を信じぬく「覚悟」が必要です。
「あなたを信じています」
「あなたならできる」
「あなたが考えたようにやってみて」
「失敗したら、私が責任を取る」
心から相手を信じ、励まし見守る。
栗山さんは、そうやって言葉を掛け続けたのだと思います。
選手はきっと、「自信」や「勇気」を持つことができるでしょう。
「実績」が伴えば、より一層「自信」や「勇気」を持つことができるでしょう。
「信じて信じて信じぬき、あなたの力を引き出す」
チームマネジメントの極意なのかもしれません・・。
まとめ
栗山さんの人材育成やチームマネジメントには、学ぶことは多かったです。
特に、傾聴の姿勢には、感銘を受けました。
決して、誰にもできることではありません。
おそらく、膨大なエネルギーを費やすはずです。
ただし、チームマネジメントを司るリーダーにとって、傾聴は必須スキルであります。
「スキル」であるけど、心構えがそれ以上に大切であることを、栗山さんは教えてくれました。
相手を心底信じて、信じぬく。
誠をもって言葉で伝える。
そりゃ相手は、心をひらいて本音を言わざるをえないでしょう。
それは、聴き手を信じている証です。
そのやりとりで得た情報によって、課題の本質が見えてくるでしょう。
今回の番組で得た知見を、みなさんと共有したいと思います。
栗山さんや番組の関係者に感謝です。
それでは、また。
結城一郎